日記

「えぇかげんにせぇよ、モーテル」 (2)

さて、今回のアメリカ仕入れでは我々は台風に遭遇するという不運に見舞われたのであった。
ほんと不運! 台風とガッチャンコするなんて初めて。直撃を受けたわけではなかったんだが、それでも天気は悪く、予定変更を余儀なくされたわけで、そんな中車を走らせて移動しているときのこと。
日も暮れてきた。雨も降ってるし、さらに激しくなるかもしれない。こんなときはもう一刻も早く宿を取りたい。ナビで検索して一番近いとこに泊まろう。幸いすぐ近所にあった。
聞いたことないモーテルだが、でもこの際そんなのどーでもいい。さっそくチェックインするためオフィス(フロント)へと行ったのだが、電気はついているのに誰もいない。ピンポン押しても誰も出てこない。仕方ないので横にあった従業員通用口のようなドアを店主がドンドンする。誰も出てこない。さらにしつこくドンドンする。しばらくするとようやく人が出てきた。
出てきたのは前歯が全てない、ひと目でアウトな感じの白人のおっさん。まるでホラー映画の始まりみたいだ。部屋はあるそう。料金安い。その場で現金で料金を払って(カードは使わないでおこうと思った)、若干覚悟しつつ鍵を渡された部屋に入ってみると案外ふつう。なんだ、ちょっと拍子抜け。もちろんバスルームもチェック。
・・・やっぱりね。
バスタブにはこおろぎともう一匹、よく分からない虫がひっくり返って死んでた。あとよく分からない金属片(?)
よく見ると洗面台の周りの床にも虫の死骸が数匹。
バスタブの排水は間違いなく詰まってるだろう。ためしにお湯を出してみる。
・・・やっぱり。
いいや、もう。今日は風呂入らない! 顔洗ってさっさと寝よ。
(ちなみに翌朝、そのような極悪バスタブにてシャワーを浴びる極意というものを店主より伝授され、技も披露されたのだが、とてもマネしようとは思えなかった。)
コンタクトレンズを外して洗うために、洗面ボウルの栓をする(流れていかないように)。洗い終わって、たまった水を流そうと思って栓を元に戻そうとしたら今度は元に戻らない。指でこじ開けようとしても無理だ。
もういい! 隙間から微妙に流れてるから、いいや、もう。
そんなことをしていると部屋のほうから店主の声。
「うわ、ノミおった!」
ノ、ノミ~!?
そうして翌朝、「かい、かい、かいい!!」 店主の叫び声。 
ノミ(ダニ?)に刺されまくった店主。 私は無傷。 
そう、店主は私の「歩く虫除け」なんである。 店主といると蚊もノミもダニもまず店主へと行くのだ。気の毒だが。
店主はその後しばらく痒みに悩まされていた。経験ある方はご存知でしょうが、ノミもダニもあれ、痒みはなかなか引かないんですよね~。 気の毒に。
それにしても、ノミ・ダニモーテルは初めてだった。もう二度と結構だが。
翌日チェックアウトして車を走らせていると、すぐそばにもう一軒別のモーテルがあったのだった。 もう少し我慢して車を走らせるべきだったのだ。
でもそこだって聞いたことない名前だった。ノミ・ダニモーテルではないという保証だってないのであった。

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